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東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)128号 判決 1987年12月03日

原告 ヤマハ株式会社

被告 美津濃株式会社

編注 同月四日付更正決定による訂正は、本文に組み入れた。

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

原告訴訟代理人は、「特許庁が、昭和五八年五月一一日、同庁昭和五三年審判第一五六〇八号事件についてした審決を取り消す。訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決を求め、被告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求めた。

第二請求の原因

原告訴訟代理人は、本訴請求の原因として、次のとおり述べた。

一  特許庁における手続の経緯

原告は、別紙記載のとおりの「ALLROUND」の欧文字を横書きしてなり、商標法施行令別表第二四類「運動具、その他本類に属する商品」を指定商品とする登録第一三一六九二四号商標(昭和四三年一二月二日商標登録出願、同五二年一二月一九日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者であるが、被告は、昭和五三年一〇月三〇日、特許庁に対し、原告を被請求人として、本件商標の登録無効の審判を請求し、昭和五三年審判第一五六〇八号事件として審理されたが、昭和五八年五月一一日、「本件商標の指定商品中「スキー用具」についての登録を無効とする。」旨の審決(以下「本件審決」という。)があり、その審決謄本は、同年七月四日原告に送達された。

二  本件審決理由の要点

本件商標の構成及び指定商品は、前項記載のとおりであるところ、「ALLROUND」の文字は、「万能、多芸、万能の、多芸の、なんでもこなす人」等を意味する英語で、特にスポーツマンの間では万能選手をオールラウンド・プレーヤー、オールラウンド選手又は単にオールラウンドと称し、極めて親しまれた語であることは認められるが、この語が指定商品運動具について、商品の品質、効能を表示するものであるとして取引上普通に使用されている事実の立証がないので、運動具について自他商品の識別標識としての機能を有しないものと認めることはできない。次に、スキー用具について審理するに、請求人(被告)提出に係る証拠によれば、「オールラウンド」という用語は、オーストリア国「ケスレー」(日本輸入総代理店 丸紅飯田株式会社)、オーストリア国「フイツシヤー」(発売元 兼松スポーツ用品株式会社)、西独国「エルバツハ」(日本総代理店 株式会社日本ダンロツプ)、仏国「DYNAMIC」(日本総代理店 日仏貿易株式会社)、米国「オーリン」(ダイワ精工株式会社)、伊国「FREYRIE」(日本総代理店 ミツコスポーツ株式会社、発売元 渡辺株式会社及び佐々木株式会社)、「K.K.三洋スポーツ商会」、伊国「ランボルギーニ」(総代理店 日本カベール株式会社)、「第一商事株式会社」、「西沢スキー」、伊国「マクセル」(輸入発売元 株式会社東京トツプ)、「HIROSAWA」、米国・オーストリア国「HEAD」(株式会社大沢商会)、「アジアスキー株式会社」、スイス国「VENDRAMINI」(日本輸入発売元ユー・テイー・シー・ジヤパン株式会社)、仏国「DYNASTAR」、「ダイワ精工株式会社」、伊国「SPALDING」(総発売元 丸紅飯田株式会社)、「小賀坂スキー製作所」、米国「HART」(株式会社アシツクス)、オーストリア国「ATOMIC」(伊藤忠商事株式会社)、オーストリア国「K2」、オーストリア国「クナイスル」(リーベルマン、ウエルシユリー株式会社)、「カザマスポーツ販売株式会社」、「株式会社伊村製作所」、「ブリザード」(総代理店 ニチレイスポーツ株式会社)、「株式会社スワロースキー」等の多くの会社で、「オールラウンド」、「オールラウンドスキー」、「オールラウンド用」、「オールラウンドタイプ」、「オールラウンドモデル」、「オールラウンドのスキー」として使用されている事実が認められ、『愛用者の証言』としても、増原宣義、金井崇(プロスキーヤー)、小滝頼介(小滝アメリカンスキースクール校長)、中川照勝(プロレーサー)、杉山進(杉山進スキースクール校長)、小林啓二(プロスキーヤー)の各氏が「オールラウンド」の語を記述的に使用している(甲第二八号証。本訴における甲第六号証の三七の(イ)ないし(オ))。そして、コンサイス外来語辞典(三省堂編修所編)には、「オールラウンド」は、コンビネーシヨンスキーと同義語であり、コンビネーシヨンスキーとは、「回転・滑降の両方に使えるスキー、コンビあるいはオールラウンドとも。」と所載されている。以上の事実よりして、「ALLROUND」の文字は、被請求人(原告)が古い時代からスキーに使用していることを否定するものではないが、該文字は、被請求人(原告)以外にも多くの会社が本件商標の登録日(昭和五二年一二月一九日)前よりスキーに使用していたことが認められる。してみれば、「ALLROUND」の欧文字よりなる本件商標は、これを指定商品中スキーに使用しても、これに接する取引者、需要者は、その商品がオールラウンドスキー(回転・滑降の両方に使えるスキー)であることを認識するにとどまり、自他商品識別標識としての機能を有しないものとみるのが相当である。また、これをオールラウンドスキー以外のスキーに使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。

したがつて、本件商標は、その指定商品中スキー用具について、商標法第三条第一項第三号及び同法第四条第一項第一六号の規定に違反して登録されたものであるから、右商品については、同法第四六条第一項第一号の規定により、その登録を無効とすべきである。

三  本件審決を取り消すべき事由

「オールラウンド」という用語が、本件審決摘示のとおり、多くの会社等で、スキーに関して、「オールラウンド」、「オールラウンドスキー」、「オールラウンド用」、「オールラウンドタイプ」、「オールラウンドモデル」、「オールラウンドのスキー」というように使用されていたこと(使用の時期及び期間の点は除く。)、及び増原宣義外五名(プロスキーヤー、スキースクールの校長等)が「オールラウンド」の語を記述的に使用していることは認めるが、本件審決は、「オールラウンド」という片仮名文字が多くの会社で使われているとの事実及びコンサイス外来語辞典の記載から、直ちに、「ALLROUND」という語がスキー用具について、「回転・滑降の両方に使えるスキー」を意味する語として使用されているとの誤つた認定をした結果、本件商標は、自他商品識別標識としての機能を有せず、かつ、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるとの誤つた認定判断をし、また、本件商標が商標法第三条第二項に該当するとの原告(被請求人)の主張に対する判断を遺脱し、ひいて、誤つた結論を導いたものであるから、違法として取り消されるべきである。すなわち、

1  事実誤認

(一) 「ALLROUND」の意味について

本件審決は、「コンサイス外来語辞典(三省堂編修所編)に、「オールラウンド」は、コンビネーシヨンスキーと同義語であり、コンビネーシヨンスキーとは、「回転・滑降の両方に使えるスキー、コンビあるいはオールラウンドとも。」と所載されていることを一つの根拠に、「ALLROUND」という語は、回転・滑降の両方に使えるスキーを意味する旨認定しているが、右認定は誤りである。すなわち、「ALLROUND」という語は英語であるから、その本来の意味を検討するに、Concise Oxford Dictionary(第七版。甲第三七号証の一ないし三)には、「Allround」という見出し語はなく、ただ、「Allrounder」という語があり、何でもこなすと人という趣旨の説明があるだけであり、WebsterのNew Twentieth Century Dictionary(甲第三八号証の一ないし三)及びThird New International Dictionary(甲第三九号証の一及び二)には、「Allaroundを見よ」となつており、「Allaround」には、「万能の」というような意味だけで、スキー用語などではなく、American Colledge Dictionary(甲第四〇号証の一及び二)、研究社の新英和辞典(甲第四一号証の一ないし三)及び小学館のランダムハウスの英和辞典(甲第四二号証の一ないし三)にも、「Allround」として、万能的なことを意味することが書いてあるだけで、スキーのことなどは書かれていない。以上のように、「ALLROUND」という語には、「回転・滑降の両方に使えるスキー」という意味はなく、又はあつたとしても辞書に採用されるほどの一般的なものでないことが知られる。仮に、特殊な社会で独自の意味に用いられることがあるとしても、英語の辞書にない語義が、他国民である我々の間に一般的に知られているなどという認定をすることはできることではない。次に、英語の「Allround」が、「オールラウンド」として特別な意味を獲得したか否かを検討するに、外来語は外国からきて日本語になつた言葉を意味し、日本語の一部であるから、国語辞典を見るに、広辞苑(甲第六号証の一三の(イ)ないし(ハ))及び新明解国語辞典(同号証の一二の(イ)ないし(ハ))には、「オールラウンド」が回転・滑降の両方に使えるスキーであるとの説明などなく、また、日本国語大辞典第三巻(甲第四三号証の一ないし三)にもない。また、外来語辞典を検討しても、東京堂出版(甲第六号証の一〇の(イ)ないし(ハ))、角川書店(甲第四四号証の一ないし三)、日東書院(甲第四五号証の一ないし四)の各外来語辞典、集英社の「外国からきた新語辞典」(甲第四六号証の一ないし四)にもそうした記載はなく、自由国民社の「現代用語の基礎知識」(甲第四七号証の一ないし三)のスキー用語の箇所には見出しがなく、一般外来語の項に「万能」的な説明があるだけである。更に、スポーツ及びスキー関係の書物を調べてみても、ポプラ社のスポーツ全集第二〇巻「スポーツ事典」(甲第四八号証の一ないし四)には、「オールラウンド・プレイ」が卓球の用語として、「オールラウンドプレイヤー」が野球の用語としてあるだけで、園部勝著「スキー教本」中の「スキー用語集」(甲第四九号証の一ないし一〇)、冬樹社「アルペン競技への道」中の「スキー用語の解説」(甲第五〇号証の一ないし一〇)、スキージヤーナル社「日本スキー教程」中の「用語の解説」(甲第五一号証の一ないし一一)、同「SAJスキー教程」中の「スキー用語」(甲第五二号証の一ないし一二)、平凡社「スキー教程」中の「初心者のための常識用語及び外来用語」(甲第五三号証の一ないし七)、野崎彊著「スキー」(旺文社発行)中の「用語解説」(甲第五四号証の一ないし九)のいずれにも「オールラウンドスキー」という語は記載されていない。以上詳述したことからすると、日本語としての「オールラウンド」という語に、回転・滑降の両方に使えるスキーという意味はなく、したがつて、「コンサイス外来語辞典」の「オールラウンド」に関する記載は誤りであり、ましてや、英語の「Allround」にそのような意味は全くない。

(二) 「オールラウンド」という語の使用例について

本件審決がその認定に使用した証拠中には「ALLROUND」という語の使用例は全くなく、本件審決において使用例として挙げられているのは、すべて「オールラウンド」という片仮名文字を使用した例である。そして、右「オールラウンド」という語の使用例をみると、単に一時的断片的に使用されたことを示すにすぎず、その内容を検討するに、(1)「万人向き」という意味で使われている例としては、「すべてのスキーヤーを満足させることの出来るオールラウンドなスキー」(甲第六号証の二二の(ヌ))、「ミドルクラスからレーサーまでのオールラウンドなスキーです。」(同号証の二七の(ロ))、「その名の通り誰もが自由に気楽にスキーを楽しんでいただけるように開発されたオールラウンドスキー。」(同号証の三二の(ロ))、その他同号証の一九の(ヘ)、二〇の(ハ)及び二五の(ハ)等が、(2)「初心者用」という感じで使われている例としては、「滑りやすさと操作性を特に重視して設計された基礎スキーヤーのためのオールラウンドタイプ。技術的進歩を望んでいる中級、初級者用。」(甲第六号証の三一の(ロ))、「初級者にもチヤレンジできるオールラウンドタイプの素敵なスキー。」(同号証の三三の(ハ))、「女性や体力のないスキーヤーのために設計したオールラウンドの高級モデル。」(同号証の三四の(ホ))、その他同号証の二二の(リ)等、(3)どんな条件にも適するという意味で使われている例としては、「どんな雪にもマツチするオールラウンドのスキー」(甲第六号証の二一の(ホ))、「あらゆる雪質、斜面にも安定した滑走が楽しめるオールラウンドスキー」(同号証の二二の(ヘ))、「アイスバーンから深雪まで、あらゆる雪質、地形も斜面を選ばず最高の技倆を発揮できるオールラウンドなスキー。」(同号証の二八)、その他同号証の二〇の(ハ)、二五の(ハ)、二七の(ロ)、三六の(ロ)及び三七の(ニ)、(ト)、(ヌ)等があり、(4)どういう目的にも使えるという意味で使われている例としては、「トツプスキーヤーのためのオールラウンドタイプ。競技にも、基礎スキーにも、ゲレンデやツアーにも信頼性の高さを誇ります。」(甲第六号証の二二の(二))、「競技から一般オールラウンドスキー」(同号証の三六の(ト))等という例があり、(5)各種の優れた性能を持つているという意味で使われている例としては、「回転、操作性、スピードと最高のオールラウンド。」(甲第六号証の一七の(ロ))、「滑走性、弾性、回転そして切れ味と最高のオールラウンドモデルです。」(同号証の二二の(ロ)、「あらゆる条件に対し、完璧な性能をそなえたエキサイテイングなスキーです。大回転用の精緻なスタイル、すぐれた弾性、そして高速度滑走時のぶれをおさえるコルゲーシヨン・コア。」(同号証の二七の(ロ))がある。右以外のものも、それ自体の意味は不明ながら、少なくとも、「回転・滑降の両方に使えるスキー」という意味で用いられていないことの明らかな例が多い。

以上のことからすると、右使用例が該当するスキーを「回転・滑降の両方に使えるスキー」であることを示す品質表示語として使われているとはいえないこと明らかであり、したがつて、本件審決認定の使用例をもつて、「オールラウンド」という語が、まして「ALLROUND」という語が「回転・滑降の両方に使えるスキー」という意味で用いられていると認定することはできない。なお、被告は、本件審決が、オールラウンドスキーについて、「回転・滑降の両方に使えるスキー」と括弧内に注記したのは、コンサイス外来語辞典において、オールラウンドはコンビネーシヨンスキーと同義であり、コンビネーシヨンスキーは、回転・滑降の両方に使えるスキーであると所載されていることによるのであり、当業者は、コンビネーシヨンスキーとは、一般用のスキーを指すものと理解しているのであるから、コンビネーシヨンスキーが「回転・滑降の両方に使えるスキー」であるとのコンサイス外来語辞典の説明は、正にこのような一般用のスキーであることをいつているにすぎないものであり、オールラウンドは、正にかかるコンビネーシヨンスキーと同義である旨主張している。しかしながら、(1)甲第六号証の一五の(ロ)(フイツシヤー)では、GTX等のスキーについて、「オールラウンド」という説明を付しているが、別のスキー(右から五番目及び七番目のスキー)については、スキーの機種として、「スーパーグラスコンビ」、「アル・スチール・コンビ」というように「コンビ」という言葉が用いられており(「オールラウンド」にはいかなる場合にもこのような使われ方はない。)、(2)同号証の一五の(ニ)(エルバツハ)では、「フアイバー600」というスキーについて、「完成されたオールラウンドスキー」という説明をしているが、すぐその上の「MS-100」というスキーについては、「コンビモデル」という説明をして、「オールラウンドスキー」と「コンビモデル」とを違う意味内容を持つ語として使い分けており、(3)同号証の一六の(ロ)(ミシヤル)では、「MICHAL 117」というスキーについて、「オールラウンド用」という説明をしているが、「MICHAL 447」というスキーについては、「コンビネーシヨンタイプ」という説明をしており、「オールラウンド用」と「コンビネーシヨンタイプ」とを違う意味内容を持つ語として使い分けており、同号証の一七の(ハ)及び一九の(ト)(FREYRIE)では、「MAKEBARED」、「MAKEBA WHITE」というスキーについて、「オールラウンドタイプ」という説明をしているが、そのすぐ上に掲載された「MIRAGE PRO」というスキーについては、「コンビネーシヨンタイプ」という説明をしており、「オールラウンドタイプ」と「コンビネーシヨンタイプ」とを違う意味内容を持つ語として使い分けており、(5)同号証の一九の(ハ)(sno-rex)では、「グラスGII」というスキーについて、「中級者用オールラウンドスキー」という説明をしているが、この「グラスGII」というスキーは、初心者用の「グラスGI」というスキーと上級者用の「グラスGIII」というスキー(一般スキーヤー向けゲレンデ用)の中間にあるスキーで(価格もそうである。)、特に「グラスGII」というスキーだけが回転・滑降の両方に使えるスキーであるとは思われず、(6)同号証の二〇の(ハ)(ケスレー)には、「エクス・イレブン エス・シー」というスキーについて、「オールラウンド・レーシングスキー。コンビネーシヨンタイプ。」という説明があるが、右の使用例において、「オールラウンド」と「コンビネーシヨンタイプ」とが同じ意味内容を持つ語として用いられていないことは確かであり、(7)同号証の二一の(ニ)(マクセル)には、「RACING X2」というスキーについて、「オールラウンドレーサー専用スキー」という説明があるが、「オールラウンド」は「レーサー」にかかる形容詞であり、同号証の二六(マクセル)では、「デルタ」というスキーについて、「オールラウンド」という説明をしているが、「シグマ・ブラツク」というスキーについては、「コンビネーシヨン」という説明をしており、「オールラウンド」と「コンビネーシヨン」を違う意味内容を持つ語として使い分けており、(8)同号証の二三(DYNASTAR)には、「MV2コスミツク」というスキーについて、「オールラウンドスキー。MV2エキツプと同じ構造ですが、柔か目に作られてあります。インストラクター向きスキー。」という説明があるが、「MV2エキツプ」というスキーは、「フランスナシヨナルチームが実際に大回転滑降に使用しているものです。」というのであるから、これまた回転・滑降の両方に使えるスキーということではない。(9)同号証の二九の(ロ)(アジアスキー)では、「コンビネーシヨン」と説明された一〇台のスキーのうちの六台についての総括的な説明として、「オールラウンド」という語が使われており、明らかに「コンビネーシヨン」と同じ意味内容を持つ語として使われていない。(10)同号証の三四の(ロ)、(ハ)及び三六の(ニ)(スワロー)では、スキーを、「レジヤー用スキー」、「オールラウンド用スキー」、「スポーツ用スキー」に区別している。しかし、レジヤー用のものも滑り降りたり曲がつたりするのであつて、こうした区分をした者は、単に滑り降りたり曲がつたりできさえすれば、オールラウンドスキーであると考えているのでないことは確かである(なお、ここで「オールラウンド用スキー」とされている「GS 333」は、同号証の三三の(ロ)では、「オールラウンド用スキー」とはされていない。)。

以上のとおり、具体的な使用例をみると、「オールラウンドスキー」を「コンビネーシヨンスキー」又はその略称である「コンビ」とは明らかに異なるものとして用いている例も多く、したがつて、被告の右主張は首肯できない。

(三) 「愛用者の証言」について

本件審決は、甲第六号証の三七の(イ)ないし(オ)(審判手続きにおける甲第二八号証)から、増原宣義等が「愛用者の証言」として、「オールラウンド」の語を記述的に使用していると認定しているが、その内容は、愛用者としての各社のスキーの使用感想を述べたもので、「オールラウンド」という語を「回転・滑降の両方に使えるスキー」などという限定された意味で使用しているわけではない。すなわち、(1)増原宣義氏の証言には、「オールラウンド」という語が出てくるが、それは到底回転・滑降兼用スキーなどという意味で使用されていると解することはできない。コメントの内容もさることながら、「オーチエ」のスキー自体「オールラウンド」といつているのは掲載された三台のスキーのうち一台しかないのであるから、「オールラウンド」という語が本件審決認定のように滑る態様に応じた特定のスキーの種類を意味するのであれば、そういうものとそうでないものとを含めて三台全部についてのコメントとしてこの語が使えるはずはないのである。このことは、広告主も増原氏も、この言葉を「一般向き」という程度の、あまり内容のない形容詞としか考えていないことを示すものである。「ポイントをつかんで乗りこなしたならば、その人の技量にあつたものを必ず見い出してくれる。」というのは、誰にでもいい、万人向きということである。(2)金井崇氏の証言には、「オールラウンド」という語が出てくるが、同氏のコメントの対象となつた「K2」の三台のスキー中、回転・滑降兼用スキーなどというものは一台もなく、それどころか、三台のうちの一台である「コンペ810」というスキーには「GSL(ジヤイアント・スラローム)向き」という説明がある。そして、そのコメントは、「コブ、新雪、そしてレツスン、競技とすべてに良い、オールラウンドのスキーといえる。アイスバーンにおいても十分強さを発揮している」というのであるから、「オールラウンドスキー」とは、全天候、多目的スキーという趣旨で使用したものと解すべきである。(3)小滝頼介氏の証言にある、「くせのないオールラウンドスキー」とは、同証言にある「誰にでも合う、はきやすいスキー」というのと同じことであり、結局「万人向き」ということである。(4)中川照勝氏の証言には、「オールラウンドのスキー」という語があるが、本文のスキーについての説明そのものには、「オールラウンド」という語はないし、どういうことが同氏のいう「オールラウンド」であるかも分からない。「一般ゲレンデ向きのスキー」、「くせがなく扱いやすい」、「一般スキーヤーの遊びのスキーに最適である」などということであろう。(5)杉山進氏の証言にある「私たちの場合、緩斜面も急斜面も凸凹も、そしてアイスバーンも一台のスキーで滑るわけです。そういつた意味でオールラウンドのスキーでなくてはならないのです」というコメントからうかがわれることは、「多目的スキー」ということである。(6)小林啓二氏の証言にある「新雪、悪雪、アイスバーンでの反応もすばらしく、オールラウンドをこなせるスキーである。」との表現は、雪の状態いかんにかかわらず使用できるスキーであることを意味している。

以上の(一)ないし(三)の事実によれば、「オールラウンド」という語が、ましてや「ALLROUND」という語がスキーについて、「回転・滑降の両方に使えるスキー」を意味する語として通用しているとの事実は認められず、本件審決の認定は、事実を誤認したものであること明らかである。

2  判断遺脱

本件審判において、本件商標は、商標法第三条第一項第三号に該当するとの被告の主張に対し、原告は、その主張を争うとともに、原告が「ALLROUND」の語を長年にわたつてスキーの商標として使用してきた結果、取引者及び需要者の間に広く知られた自他商品の識別機能を持つ著名商標として認識されているとの主張、立証をしたが、この主張は、被告主張のような事実のないことを示す間接事実の摘示であるとともに、商標法第三条第二項(使用による顕著性)に基づく仮定抗弁とみられるべきものである。しかるに、本件審決は、この点について何ら判断を示していない。原告は、その製造販売に係る商品「スキー」の商標として、本件商標、本件商標の連合商標として登録されている登録第一三一六九二三号商標「オールラウンド」及び登録第四五八二〇九号商標「ALLROUND オールラウンド」を長年にわたり盛大に使用してきたもので、本件商標は、原告の製造販売する「スキー」に係る商標として、その登録査定時から今日に至るまで周知著名となつており、自他商品を識別させるに足りる特別顕著性を具備していたものである。しかるに、本件審決は、この点に関し、「オールラウンド」の語は、被請求人(原告)提出の乙号各証によつて被請求人(原告)も古い時代からスキーに使用していることを否定するものではないが、他にも多くの会社が使用していた、と述べるだけであつて、右の語が顕著性を取得したか否か、また、他社の使用がそれとどうかかわりがあるかについては判示するところがない。したがつて、本件審決は、被請求人(原告)の仮定的な抗弁について判断をしたとはいえず、本件審決の結論に影響を及ぼすおそれのある重大な争点についての判断を遺脱したものというほかはない。

第三被告の答弁

被告訴訟代理人は、請求の原因に対する答弁として、次のとおり述べた。

一  請求の原因一及び二の事実は、認める。

二  同三の主張は争う。本件審決の認定判断は正当であつて、何ら違法の点はない。

1  事実誤認の主張について

(一) 「ALLROUND」の意味について

原告は、英語の辞書や日本の他の辞典、更には、スポーツ関係の書物にも、コンサイス外来語辞典の「オールラウンド」の項のような記載がないことを理由に、コンサイス外来語辞典の右記載は誤つていると極言している。しかしながら、英語の辞書に記載のない点は、オールラウンドをコンビネーシヨンと同義に一般用スキーとして使用するのは、我が国スキー業界においての使用形態であり、英語の辞書を参照すること自体意味がないし、日本の他の辞典やスポーツ関係の書物に記載のない点は、スキー業界における「オールラウンド」という語の使用状況をふまえてコンサイス外来語辞典が一番詳細に所載しているというだけのことである。詳細さを欠く他の辞書に所載されていないからといつて、コンサイス外来語辞典を誤りとなし得るものではない。また、スポーツ関係のスキー教本等は、本来スキーの滑り方等の解説を主とするものであり、業界での用語の使用例を網羅して所載する性質のものではない。よつて、「ALLROUND」の意味についての原告の主張は理由のないものである。

(二) 「オールラウンド」という語の使用について

(1) 本件審決は、「オールラウンド」という語の多数の使用例及び愛用者の証言が「オールラウンド」という語をスキーの品質を示す表示として使用している事実及びコンサイス外来語辞典も「オールラウンド」という語をスキーについての品質表示語として所載している事実に基づいて、「ALLROUND」という語をスキーについての品質表示語であると認定し、「ALLROUND」の文字からなる本件商標を「オールラウンド」によつて表される品質のスキーに使用するときには商標法第三条第一項第三号の規定に該当することを、また、それ以外のスキーに使用するときには同法第四条第一項第一六号の規定に該当することを認めたものである。ところで、商標法第三条第一項第三号の規定は、何らかの意味において、当該商品の特性を記述する目的をもつて表示する語については、一般に使用されることが多いため、自他商品識別の機能を欠くことが多く、また、商品取引上何人にとつても必要な表示であるために、特定人のみに独占的に使用させることは、公益上も妥当ではないというところから不登録事由とされているものであり、「ALLROUND」という語が、いかなる品質表示語として厳密に特定されるのか、また、そのような厳密に特定された意義において統一されて使用されていたか否かの探索は、商標法第三条第一項第三号の規定の立法の趣旨からすれば全く無用のことであつて、スキーの特性を記述する品質表示語であることさえ認定されれば、それをもつて足りるというべきである。ところで、本件審決は、「オールラウンド」の語は、「オールラウンド」、「オールラウンドスキー」、「オールラウンド用」、「オールラウンドタイプ」、「オールラウンドモデル」、「オールラウンドのスキー」として使用されていると認定しているのであつて、右使用の態様自体からして、スキーの品質を表示する語であることは明らかである。しかも、本件審決が右のように認定した使用例についてのより具体的な態様を甲号証についてみれば、「オールラウンド」という語は、例えば、甲第六号証の一四の(ロ)や同号証の二五の(ロ)にみられるように、「回転用」、「大回転、滑降用」との品質表示と対置される品質表示として、また、同号証の二四や同号証の三七の(イ)ないし(オ)にみられるように、「モデル」の項や「スキー特性」の項に用いられているのであつて品質表示であることは一層明確である。その他、甲第六号証の一四の(イ)ないし(ハ)から同号証の三七の(イ)ないし(オ)までにみられる「オールラウンド」という語がスキーの品質(特性、モデル、種類ともいい換え得る。)を示す語として用いられていることは、これらの各甲号証の記載からして明らかである。しかも、コンサイス外来語辞典には、「オールラウンド」がスキーについての品質表示語であることまでが所載されているのである。原告は、自社の「パラマウントカスタムXL」の品質について、「設計変更で操作性の向上をねらつたオールラウンドモデル」「(パラマウントカスタムX)は、性能上のタイプ分けからみると、オールラウンドタイプに入る。」(乙第一三号証の九)との説明を、また、自社の「パラマウントEX」の品質について、「操作性を重視したオールラウンド・タイプ」と説明しており、原告自らが「オールラウンド」の語を一般用スキーの品質表示として使用しているとの事実は、「ALLROUND」を品質表示として認定し、本件商標の登録を無効とした本件審決の正当性を何よりも明確に示すものであり、かつ、本件審決の取消しを求める原告の請求が全く理由のないことを示すものにほかならない。

(2) なお、本件審決は、「オールラウンドスキー」について、回転・滑降の両方に使えるスキーと括弧内に注記しているが、回転専用スキーでもなく、滑降専用スキーでもないスキーについて、回転・滑降の両方に使えるスキーであると特記することは当然のことであり、回転・滑降の両方に使えるスキーであるということは、回転専用でもなく、滑降専用でもないスキーということであつて、かかる意味からすれば、一般用のスキーであるという趣旨にほかならない。しかも、本件審決が、オールラウンドスキーについて、「回転・滑降の両方に使えるスキー」と括弧内に注記したのは、コンサイス外来語辞典において、オールラウンドはコンビネーシヨンスキーと同義であり、コンビネーシヨンスキーは、回転・滑降の両方に使えるスキーであると所載されていることによるのであるから、回転・滑降の両方に使えるスキーたるコンビネーシヨンスキーとは、当業者にどのようなスキーとして理解されているかをみれば、より一層、この点が明らかに理解されるが、当業者は、コンビネーシヨンスキーとは、一般用のスキーを指すものと理解しているのである。コンビネーシヨンスキーが「回転・滑降の両方に使えるスキー」であるとのコンサイス外来語辞典の説明は、正にこのような一般用のスキーであることをいつているに過ぎないものであり、オールラウンドは、正にかかるコンビネーシヨンスキーと同義なのである。そして、コンビネーシヨンとオールラウンドの用語の関係についていえば、スキー業界においては、当初、回転専用でもなく、滑降専用でもない一般用スキーについて、コンビネーシヨンという用語が使用されていたが、その後、徐々に、オールラウンドもこれと同じ意味を持つ語として使用されてきたというのが業界の実情なのである。そして、一般用スキーについてのオールラウンドの表示は、少なくとも一九六六年からは、アメリカのヘッドスキーについて使用されており、以後、多数の業者によつて一般用スキーを表示するものとして使用され、現在においてもなお使用されているというのが現状である。更に、オールラウンドという語自体が、元来、「万能な、用途の広い、全般にわたる、広く役だつ」等という意義を持つ語であるところから、オールラウンドタイプ、オールラウンド用等の語を、そのまま日本語に訳出したとしても、汎用スキーの意となるのであり、このことからも、回転専用でもなく、滑降専用でもない一般用スキーであることは直ちに読み取れるのである。

(3) 原告は、甲号証の使用例の中には、「万人向き」、「初心者用」、「どんな条件にも適する」、「どういう目的にも使える」、「各種の優れた性能を持つている」という意味に「オールラウンド」という語を使用しているものがあり、品質表示としての使用例ではない旨主張するが、右主張は、「オールラウンド」という語が一般用の回転・滑降の両方に使えるスキーを表示していることをあえて無視して、何らかの他の意味を探索しているだけのことにすぎない。また、原告は、「オールラウンド」が「コンビネーシヨンスキー」と併記され、「コンビネーシヨンスキー」とは異なるものとして使われている例があり、また、回転・滑降の両用のスキーの意として使われていない例もある旨主張している。しかしながら、「オールラウンド」と「コンビネーシヨン」との併用の点については、既述のとおり、回転・滑降両用の一般用スキーを、古くは「コンビネーシヨンスキー」と呼んでいたものが、「オールラウンド」とも呼ばれるようになり、徐々に「オールラウンド」との表示が増えていつたものであり、業者によつては、一般用スキーについて、「コンビネーシヨンスキー」、「オールラウンド」の双方の表示を併用しているものがあるというだけのことにすぎない。また、「オールラウンド」が回転・滑降の両方に使えるスキーの意として使われていない例があるという点についてみれば、このような例は一切存しない。原告は、かかる例であるとして、甲第六号証の一五の(ロ)、一九の(ハ)、二三、三四の(ロ)、(ハ)及び三六の(ニ)等を挙げているが、いずれも事実に反する。すなわち、甲第六号証の一五の(ロ)について、原告は、「オールラウンド」という語がスキーの機種表示として使用されていない旨主張するが、同号証の一五の(ロ)では、「クロスカントリー用」等の説明と同等の項についての説明として、「オールラウンド」という語が用いられており、事実に反する。また、甲第六号証の一九の(ハ)について、原告は、「オールラウンドスキー」と表示された「グラスGII」というスキーのみが、回転・滑降の両方に使えるスキーであるとは思われない等と主張しているが、回転・滑降の両方に使える一般スキーについて、「オールラウンド」と表示するか、ゲレンデ用あるいは中級者用等と表示するかは、業者の自由であり、かかる原告の言い分は、何ら「オールラウンド」が回転・滑降の両方に使えるスキーを表す語として使われていないとの主張と結びつくものではない。更に、甲第六号証の二三の記載について、原告は、「オールラウンド」が大回転・滑降の意に用いられていると主張するのであるが、同号証の二三は、MV2コスミツクは、大回転・滑降に使用しているMV2エキツプを「柔らか目」にしたものであり、したがつて、MV2コスミツク自身は「オールラウンドスキー」であると説明しているのであつて、これもまた原告の主張は事実に反している。また、甲第六号証の三四の(ロ)、(ハ)及び三六の(ニ)についての原告の主張は、その主張自体からして、「オールラウンド」を回転・滑降に適したスキーという意味に用いていないとの理由となし得るものではない。そして、原告の掲げるその他の使用例も右と同様であつて、結局、「オールラウンド」という語が回転・滑降の両方に使えるスキーの意として使われていない例などというものは全く存しないのである。更に、原告は、「愛用者の証言」について、「オールラウンド」という語がスキーの品質を表示する語として使用されていない旨主張するが、この点は、「オールラウンド」という語が、一般用スキーについての品質表示であるとの点を全く無視したうえで、それ以外の意味を文中から探索しているにすぎない。原告は、分析の前提において誤つている。

以上のとおり、コンサイス外来語辞典の記載及び「オールラウンド」という語の多数の使用例並びに「愛用者の証言」から、「ALLROUND」という語がスキーについての品質表示語であると認定した本件審決は正当であつて、何ら事実誤認はない。

2  判断遺脱の主張について

原告は、本件審決は、使用による顕著性取得の主張に対して判断をしていない旨主張しているが、本件審決は、原告の「ALLROUND」という語の使用の事実を必ずしも否定するものではないが、これに対立する事実として、原告以外の多数の会社が本件商標登録日以前からスキーに右語を品質表示として使用している事実を証拠によつて認定し、その結果、本件商標は、スキーに使用した場合、自他商品識別標識としての機能を有しないと判断しているのであつて、原告の右主張に対する判断をしていることは明らかである。したがつて、本件審決のこの点の認定判断は正当であつて、何らの判断遺脱もない。

第四証拠関係<省略>

理由

(争いのない事実)

一  本件に関する特許庁における手続の経緯、本件商標の商標登録出願日、登録日、構成及び指定商品並びに本件審決理由の要点が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがないところである。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 原告は、本件審決は「オールラウンド」という語の意議及び右語の具体的な使用例並びに「愛用者の証言」から「ALLROUND」という語が「回転・滑降の両方に使えるスキー」というスキーの品質を表示する語として使われている旨誤認し、また、本件商標が商標法第三条第二項所定の商標に当たる旨の原告の主張についての判断を遺脱した結果、誤つた結論を導いたものであり、この点において違法として取り消されるべき旨主張するが、以下に説示するとおり、原告の主張はすべて理由がないものというべきである。

成立に争いのない甲第六号証の一〇ないし一三の各(イ)ないし(ハ)及び第四三号証、第四四号証の各一ないし三及び第四五号証、第四六号証の各一ないし四によれば、本件商標の「ALLROUND」という語が、本件商標の登録日である昭和五二年一二月一九日前から「オールラウンド」と称呼され、かつ、「万能な、多芸の」、「全般にわたる」、「多方面の」、「いろいろな分野のことをうまくこなすさま」、「万能な人」等を意味する外来語として一般世人に理解されていたことは明らかである。

ところで、本件審決認定のとおり、「オールラウンド」という語が、本件審決指摘の多くの会社等で、スキーに関して、「オールラウンド」、「オールラウンドスキー」、「オールラウンド用」、「オールラウンドタイプ」、「オールラウンドモデル」、「オールラウンドのスキー」というように使用されていること(その使用の時期及び期間の点を除く。)、及び増原宣義外五名(プロスキーヤー、スキースクールの校長等)が「オールラウンド」という語をスキーについて記述的に使用していることは原告の認めるところ、原告は右「オールラウンド」等の語についての本件審決認定の意味内容等を争うから、これらの語が、スキーについて、いつごろから、また、いかなる意味内容を表示する語として使用されていたかについて検討することとする。

「オールラウンド」の語が前認定のような意義を有する語として一般世人に理解されていること、及び原告自認に係る上記の事実に、成立に争いのない甲第六号証の一四、一六、一八、二七、二九及び三一の各(イ)ないし(ハ)、同号証の一五の(イ)ないし(ホ)、同号証の一七、二〇、二五及び三二の各(イ)ないし(ニ)、同号証の一九の(イ)ないし(チ)、同号証の二一の(イ)ないし(ト)、同号証の二二の(イ)ないし(ル)、同号証の二三、二四、二六及び二八、同号証の三〇の(イ)、(ロ)、同号証の三三の(イ)ないし(ヘ)、同号証の三七の(イ)ないし(オ)並びに乙第五号証の一、二、第六号証の一ないし三、第七号証の一ないし四、第八号証の一ないし五及び第九号証、第一〇号証の各一ないし六を総合すると、「オールラウンド」の語は、昭和四二年ころから本件商標の登録の日(昭和五二年一二月一九日)前までの間に頒布された本件審決指摘の会社等の製造又は販売するスキーに関するカタログ又は広告等に、また、そこに掲載の「愛用者の証言」と題する記事において、スキーに関する記述として、「オールラウンド」、「オールラウンドスキー」、「オールラウンド用」、「オールラウンドモデル」又は「オールラウンドのスキー」というように多用されており、それらに記載の「オールラウンド」の語の用法は、個々的にはニユアンスの差があるものもみられるが、その語が回転、大回転、滑降専用等品質を表示したスキーと対置される態様で、あるいは「スキー特性&バーン状況」の項目中の説明として示されていること等から、競技用、特に一般用スキーにおいて、回転・滑降の両方に使用できる性能を有するという意味又はこれを含む意味で「万能型」であるとのスキーの品質を表示する語として使用されているものと看取するに十分であり、また、右のカタログ、広告等に接した取引者及び一般需要者は、「オールラウンド」の語が付されたスキーについて、右のような性能を有する万能型のスキーと観念することはごく自然なことと認めることができ、この認定を覆すに足りる証拠はない。原告は、上掲各証拠に示される「オールラウンド」の用語の意義につき右認定と異なるものとしその理由をるる主張するが、その主張するところは、成立に争いのない甲第五〇号証の一ないし一〇、第五一号証の一ないし一一、第五二号証の一ないし一二及び第五三号証の一ないし七に記載されている「コンビネーシヨン」又は「コンビ」の用語の意味等を考慮に入れても、個々的ニユアンスの相違を殊更に強調する以上に出るものではなく、上記認定を左右するに足りず、採用することができない。そうすると、「ALLROUND」なる本件商標を、その指定商品中スキーに使用する場合は、取引者及び需要者は上記の品質を表示するものと認識し、理解するものと解せられ、しかも本件商標の表示方法は前示構成からみて極めて普通の方法で格別の識別力を有するものではないから、結局、本件商標は、指定商品中スキーに関して自他商品識別標章としての機能を有しないものとみるほかなく、また、これを右の性能を有しないスキーに使用する場合には、取引者及び需要者をしてその商品の品質を誤認させるおそれがあるものと認めざるを得ず、商標法第三条第一項第三号及び第四条第一項第一六号の規定に該当するものとして、商標登録を受けることができないものというべきである。なお、原告は、本件審決が株式会社三省堂発行の「コンサイス外来語辞典」を資料として、「ALLROUND」の語がスキー用具について「回転・滑降の両方に使えるスキー」を意味するとした点を論難するが、この点の当否は別として、右辞典をこの意味の資料として採用しない場合においても、前説示のとおりに解される以上、この点は本件審決の結論に影響を及ぼすものではなく、したがつて、原告の右主張は採用するに由ない。

次に、原告は、本件商標並びに「オールラウンド」及び「ALLROUND オールラウンド」の語を長年にわたつて原告の製造、販売に係るスキーの商標として使用してきたものであり、その結果、本件商標は自他商品の識別機能を有する著名商標として認識されている旨主張するから、検討するに、なるほど、成立に争いない甲第六号証の三九の(イ)、(ロ)から七四の(イ)ないし(ニ)まで及び同号証の七六の(イ)ないし(ハ)から一〇四の(イ)ないし(ハ)まで(同号証の一〇〇の(イ)ないし(ハ)を除く。)の各証(いずれも広告、雑誌又はパンフレツト)によると、原告が昭和三八年ころ以降本件商標の登録に至るまで「オールラウンド」又は「ALLROUND」の商標をその製造、販売に係るスキーに使用していたことを認めることができるが、前認定のとおり「オールラウンド」の語が他の会社等の製造販売に係るスキーについて本件商標の登録前一〇年余にわたりその品質表示の語として多用されてきた事情を勘案すると、上掲甲号各証及びこの点に関し原告の挙示する他の全証拠をもつてするも、いまだ原告主張の右事実を認めしめるに足りず、したがつて、原告の右主張も採用することができない。なお、原告は、本件審決が商標法第三条第二項についての原告の主張につき判断を遺脱した旨主張するが、前示本件審決理由の要点に照らせば、本件審決は、原告が「ALLROUND」の語を古くから使用していることを認定したうえ、本件商標登録前から他の多くの会社等においてもこの語をスキーに使用していることから、本件商標はこれをスキーに使用する場合、自他商品識別の機能を有しない旨認定判断しているのであるから、本件審決にはこの点につき判断の遺脱があるものとすることはできない。

(むすび)

三 以上のとおりであるから、本件審決の認定判断は正当であり、その主張の点に判断を誤つた違法があることを理由に本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかない。よつて、これを棄却しすることとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法第七条及び民事訴訟法第八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 武居二郎 杉山伸顕 川島貴志郎)

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